ジャポニスム2018|Japonismes 2018


           

レポート

「ジャポニスム2018」フォローアップ フランス高校生グループ招へい『ジャポニスム :響きあう未来』ーA組

「ジャポニスム2018 」、未来に繋ぐ日仏交流!

 2018年7月から開催されたフランスにおける日本文化・芸術の祭典「ジャポニスム2018:響きあう魂」(事務局:国際交流基金)は350万人以上の来場者・参加者を迎え、これをきっかけとして日仏交流は大きな盛り上がりを見せ、新たな日仏間の絆も生まれました。この「ジャポニスム2018」を一過性の「花火」に終わらせず、日仏の人々の交流を更に継続的で持続的なものとして発展させるため、国際交流基金では「ジャポニスム2018」に関わった方々を中心に、専門家から高校生まで幅広く日仏人的交流事業を新たに企画する計画を立てました。その第一弾とし、「ジャポニスム2018」閉幕から1年が経った2020年2月、「ジャポニスム:響きあう未来」と銘打ち、日仏交流の未来を担うフランス高校生の日本への短期招へい事業を実施しました。

 ご招待したのは、「ジャポニスム2018」公式企画「第3回全仏高校生日本語プレゼンテーション発表会」及び「高校生ニッポン文化大使」に参加したフランスの高校5校15名の生徒と4名の先生方です。2020年2月11日~20日に来日したA組と、2月25日~3月2日に来日したB組に分かれ、日本滞在中のプログラムは、日本の高校生や日本の家庭との交流、フランス高校生があらかじめ設定したテーマの調査・研究、日本の文化や歴史に触れる各所訪問・視察を中心として組まれました。また、フランスの高校生たちが日本への理解を広げ、深めるとともに、折に触れてフランスのことを日本の人々に自分たちの言葉で伝える機会を設けました。
今回はA組の滞在の様子を皆様にお届けします。

滞在日程

高校体験

 私立暁星高等学校(東京都)、埼玉県立伊奈学園総合高等学校、私立白百合学園高等学校(東京都)、私立雙葉高等学校(東京都)にご協力いただき、フランスの高校生たちによる日本の高校一日入学体験を実施しました。その中から、2月14日に訪れた埼玉県立伊奈学園総合高等学校での1日をご紹介します。同校は「第3回全仏高校生日本語プレゼンテーション発表会」に日本代表として参加し、19世紀後半から20世紀初頭にかけて活躍したフランスの実業家で、アジア各地からフランスに持ち帰った一大美術品コレクションで有名なエミール・ギメについて発表をしました。当日は、昨年この発表会に参加した後高校を卒業し、今は大学生となった伊奈学園OBも一緒に校内をご案内くださり、1日を過ごしました。
 学校に到着すると、遠藤校長先生をはじめ、先生方に温かく迎えていただきました。午前中は大教室でフランス語の授業に参加しました。授業の中でフランスの生徒は、自分たちの高校生活や滞在中のテーマについて日本語とフランス語で発表を行いました。その後、テーブル毎に分かれて交流タイムが設けられました。最初は緊張している様子だった生徒も、少人数のグループになると打ち解け、話も弾んでいました。
 午後の書道の授業では、フランスの高校生たちも書道を実際に体験しました。日本の高校生のテーブルに混ざり、やり方を教えてもらいながら、思い思いの文字を書きました。続いて、今回の受け入れを中心となって準備して下さった松田先生とクリストフ先生のフランス語の授業に参加させていただきました。フランス語のテキストを読んだり、グループワークに参加したりし、笑い声溢れる楽しい時間を過ごしているようでした。
 授業後は、掃除のお手伝いをしました。フランスには生徒による学校の掃除の習慣が無いため、フランスの生徒たちは漫画でよく目にしていた掃除の時間をとても楽しみにしており、初めての体験に喜んでいる様子でした。

日仏高校生発表会

 2月12日、高校訪問受入校の高校生、先生、保護者の方々をご招待し、暁星学園のご協力のもと、「日仏高校生発表会」を開催しました。フランスの高校生及び先生と暁星高校の生徒たちが、2~3人ずつのグループになって、日本語とフランス語で発表を行いました。フランスの生徒は、大人数の前での発表で少し緊張しながらも、フランスで準備してきた発表を見事やり遂げました。日本の高校生も、普段聞くことのない実際のフランスの高校生活や、フランスの高校生が自分で選択したテーマに熱心に耳を傾けていたました。
 暁星高校の生徒は、フランスの小説家エミール・ゾラに傾倒し、フランスをこよなく愛した文豪「永井荷風」に関してフランス語で発表を行いました。永井他に扮した寸劇仕立ての発表で、熱演に会場からは大きな拍手と笑いが起こりました。発表終了後は、フランスの高校生がフランスから持参したお菓子を振るまい、和やかな雰囲気の中、交流が行われました。話が盛り上がり、帰りを惜しむ生徒の姿も見られました。

ホームステイ

 滞在中の2日間、フランスの生徒たちは日本の家庭生活も体験しました。ホストファミリーとともに東京の街を散歩したり、和食を楽しんだり、それぞれの文化について話したり、濃密な時間を過ごしたようでした。ホストファミリーのうちで着物を着て茶道を体験した生徒もいました。短い滞在期間でしたが、最終日は皆それぞれに別れを惜しみ、またフランス、日本で再会しようと約束があちらこちらで交わされていました。
 ルシー・オーブラック高校のアナイスさんは、「現代社会についてホストシスターと話すことができました。様々なテーマに関し議論をし、日本について多くのことを学ぶことができました。またブレグジット(英国EU離脱)やフランス革命等、自身の知識を共有し、日本の人たちの意見を聞きました。いくつかの相違がある一方、趣味や音楽等多くの共通点があることに気づきました。話すことがたくさんあり、夜遅くまで話をしました。ホストシスターとは今でも連絡を取り合っています。いつか再会したいと心から願っています。私たちは自分のホストシスターやホストブラザーを、フランスの自分たちの家にいつでも迎えたいと思います。2日間しか過ごしていないのに、別れの際は涙が溢れました。」と話していました。今回の訪問の中で、ホストファミリー宅への滞在が、特に重要な機会であったという声が多く聞かれました。

テーマ別訪問

 今回の滞在では、各高校が来日前にそれぞれテーマを設定し、日本滞在中、その自分たちのテーマの視点で日本人の生活や日本の社会を見つめることで、日本に対する関心と理解を更に深めました。各高校の主な訪問先での様子をお届けします。

■ルシー・オーブラック高校/テーマ:「環境保護」

 ルシー・オーブラック高校は太陽光発電や木材を校舎に使用する等、環境に対する取り組みを積極的に行っている学校です。今回のテーマも「環境保護」にしました。日本では文部科学省が環境に配慮した施設づくりをしている学校をエコスクールとして認定しており、この取り組みを調査するため、2月13日、認定校の1つである江戸川区立篠崎第三小学校を訪問しました。有谷校長先生、江戸川区教育委員会の皆様にご案内いただき、屋上の緑化プール、多摩産材を使用した校舎、LED照明、省エネナビモニタ、ソーラーパネル、環境保護の意識を高めるための説明パネル等を見せていただきました。生徒たちは熱心に学校関係者の話しを聞き、フランスの高校との環境に対する取り組みの違いを比較していました。見学の途中、小学生より歌と手作りおもちゃの心温まるプレゼントがあり、フランスの生徒も「オー・シャンゼリゼ」をお返しに歌いました。

■ジャン・ド・ラ・フォンテーヌ高校/テーマ:「日本人とSNSやメディアとの関係」

 ジャン・ド・ラ・フォンテーヌ高校はこのテーマを掘り下げるため、2月13日に日本放送協会(NHK)を訪れ、お話を伺いました。日々ジャーナリストとして活躍されている方々から、日本においてSNSが占める位置、フェイクニュースへの対処、オープンジャーナリズムの取り組み等、様々な話を聞き、参加者は興味深く聞き入っていました。とりわけ、制作のプロセスをオープンにして、視聴者と共に番組を作り、社会問題を解決するという新しいアプローチのジャーナリズムであるオープンジャーナリズムに関しては、初めて聞く参加者も多く、最後まで質問がやみませんでした。最後は国際放送NHKワールドJAPANのスタジオを案内いただき、普段目にすることのできない舞台裏を見学しました。

■バルトルディ高校/テーマ:「日本の影響を受けたフランスの漫画・アニメのアートワーク」

 フランスは世界第2位の漫画消費国であり、多くのフランスの人たちが日本の漫画やアニメから大きな影響を受けています。その日本の漫画・アニメの魅力の秘密を紐解くため、2月18日、京都国際マンガミュージアムを訪問し、研究者そして漫画家である ユー・スギョンさんにインタビューを行いました。生徒は「現代日本の漫画とマンフラの違い」、「漫画業界での仕事に対するイメージ」、「フランスと日本の漫画業界における女性の地位」、「フランスにおける漫画の成功の理由」等の質問をし、スギョン氏の言葉に熱心に耳を傾け、積極的に意見を交わしていました。

■サンジェルマン・アン・レイ国際高校/「宮本茂と日本の文化及び自然との関係」

 サンジェルマン・アン・レイ国際高校は、昨年のジャポニスム2018における「第3回全仏高校生日本語プレゼンテーション発表会」の際、任天堂株式会社の代表取締役フェローであり、「マリオ」や「ゼルダ」の生みの親である、宮本茂さんについてプレゼンを行いました。今回の滞在では、宮本さんの故郷である京都の自然について調査をし、これが宮本さんの自然観にどのような影響を与えているか調査をしました。
 2月19日、山岳信仰の専門家で龍谷ミュージアムの副館長を務める石川知彦さんと面会し、山岳信仰について詳しいお話を伺いました。 参加者の一人、レオさんは、「日本では宗教、文化、自然が密接に関連し合って社会に定着していることが分かりました。日本人の非常に純粋な思想、考え方、習慣は、穏やかな生活様式と自然に対する高い関心からくるものに違いありません。さらに日本人の信仰心は常に自然の美しさとその調和に結び付いています。日本文化のベースには様々に形を変える自然があるということを知り、日本人の暮らしの流儀に感銘を受けました。恐らくこのような文化的背景が、宮本氏の作品の奥深くにも一要素として存在しているのだろうと思います」と感想を述べていました。
 

日本の文化・歴史に触れる

 参加者はその他にも江戸東京博物館や体験型デジタルアート美術館のチームラボボーダレス、日本科学未来館等を訪問したり、京都の寺社仏閣や広島市内、宮島等を視察したり、文楽の観劇をしたり、茶道や京友禅染体験をしたりして、伝統から最新文化、東京から関西地方、広島まで、様々な角度から日本の文化と歴史に触れました。

■茶道体験

 躙り口から入るところから始まり、礼の仕方や、お茶やお菓子のいただき方を学びました。また、床の間に飾られている掛け軸や生け花に関して説明がありました。茶道は工芸、書、生け花、懐石料理や和菓子等の食、茶室や庭の空間、禅の精神等、日本文化が凝縮されているという講師の話に参加者は聞き入っていました。また、掛け軸の「梅花雪裏春」という禅語の説明があり、その意味の奥深さに参加者は心を動かされているようでした。

■広島平和記念資料館

 参加者より地方の訪問先として希望が多かった広島に、2月17日、日帰りで訪れました。日本の歴史の一面に触れるため、平和記念資料館を訪問しました。ルシー・オーブラック高校のサラさんは「平和記念資料館は説明、歴史的資料が豊富なミュージアムです。訪問してすぐ、私は、自分がその苦しみや恐怖に満ちた現実とは全く無縁の世界に生きてきたのだということをすぐに実感しました。資料館は、一瞬で広島を恐怖に包み込んだ歴史の苦しみの時を映し出すように作られていました。地上数百メートルのところで爆発した爆弾は無数の死者を出し、放射線により長きにわたる被害をもたらしました。この訪問以前は考えたこともないことでした。」と話していました。

国際交流基金関西センターでのお別れ会

 帰国前日となる2月19日、旅の最後は、大阪府・関西空港近くにある国際交流基金の附属機関、関西国際センターにて反省会、お別れ会をしました。参加者はそれぞれの旅の思い出を語り、最後の夜を惜しみました。関西空港より参加者はフランスに向けて旅立ちました。参加者はそれぞれの思い出を胸に、帰国の途に就きました。今後将来にわたってずっと、参加者の一人一人が日仏交流の担い手であることを自覚し続け、活躍してくださることを願い、国際交流基金職員一同は参加者を送り出しました。


参加者の報告書

今回の招へいプログラムに関し参加者の方々から報告書をご提出いただきました。フランスの先生方と高校生たちの日本滞在の感想をぜひご覧ください!

報告書はこちらからご覧いただけます↓

サンジェルマン・アン・レイ国際高校
Marie FIEVETさん
Léo RIOSさん

ジャン・ド・ラ・フォンテーヌ高校
ABDELHAK Nizarさん
Awa CHOYEさん
Leila CROWLEYさん

バルトルディ高校
Honoré SUHNERさん

ルシー・オーブラック高校
Clotilde BENOIT先生
Alexandre GRAVOTさん
Anaïs MAIREさん
Sara HAMOUDAさん