ジャポニスム2018|Japonismes 2018

藤田展レポートメイン画像
©Hiroyuki Sawada

レポート
2019/02/26

多才な画家、藤田嗣治の生涯にわたる作品を紹介する展覧会と映画『FOUJITA』特別上映が開催

 昨年7月からフランス各地で開催されている「ジャポニスム2018」も大詰めを迎えるなか、「藤田嗣治:生涯の作品(1886 – 1968)」展が、パリ日本文化会館で1月16日から始まり、話題を呼んでいます(3月16日まで)。
 1913年に初めて渡仏して以来、エコール・ド・パリの画家として頭角を現したフジタは、20年代に広くその名が知られるようになりましたが、その後フランスを離れた30年代や、日本に帰国した戦時中の作品は、日本国外ではほとんど知られていません。今回の展覧会は、そうした時代も含め、藤田の生涯にわたる作品をパリで初めて紹介するものです。日本から22点、フランスから14点の、代表的作品が集う密度の濃い内容となりました。

 

©Hiroyuki Sawada

 

 藤田が独特の乳白色を用いて裸婦を描いた20年代の作品が並ぶ展示室では、「ジュイ布のある裸婦」、「五人の裸婦」、「舞踏会の前」といった大作を観ることができます。とくにこの3点が一堂に会したのは今回が初めてとか。
 世界恐慌の影響により、経済的に行き詰まったフジタが新天地を求め、中南米などを巡った30年代のセクションでは、色彩豊かな作品や、画家が撮りためた貴重な写真も展示されています。

 

「ジュイ布のある裸婦」(1922)パリ市立近代美術館蔵
©Fondation Foujita / ADAGP, Paris & JASPAR, Tokyo, 2018
E3117

 

 本展のハイライトと言えるのは、第二次世界大戦が始まり藤田が日本に帰国した時代に描いた2点の戦争画、「アッツ島玉砕」と「サイパン島同胞臣節を全うす」です。日本国外では初めての公開となりました。

 晩年の作品としては、藤田がフランスに戻りカトリックの洗礼を受けた後に制作された「礼拝」や、タイル状に描かれた連作「フランスの48の富」があります。「礼拝」には、聖母を囲んでフジタ自身と彼の晩年を看取った君代夫人も描き込まれています。

 1月15日のプレス向けの内覧には多くの来場者が訪れ、藤田への関心の高さを窺わせました。プレス・ツアーを案内した本展のキュレーターの一人であるパリ市立近代美術館のソフィ・クレブスさんはこう語ります。「フランスにおけるフジタの評価はおもに20年代の作品に拠るもので、彼のエキセントリックなパーソナリティや、狂乱の時代と呼ばれた当時のモンパルナスのイメージと相まって、どこか軽い印象があります。今回フランスであまり知られていない作品を紹介することで、フジタの異なるイメージを伝えることができるでしょう。もちろん、彼の戦争画を生で観られる特別な機会でもあります」
 ツアーに参加した美術評論家のジュディット・ベナム=ユエさんは、「戦争画はプロパガンダの目的で描かれたと聞きますが、実際にはそう感じさせません。西洋の絵画技法の影響が窺える精緻な技術とともに、普遍的に戦争の悲惨さ、残酷さを伝えていると思います」

 オープニング当日にはシンポジウムも開かれ、クレブスさんのほか、監修者である大原美術館館長の高階秀爾氏、茨城県近代美術館館長の尾﨑正明氏、共同キュレーターである美術史家の林洋子氏が参加しました。高階氏は「自画像の藤田」をテーマに、彼のユニークな人柄を紹介し、尾﨑氏は戦争画とその後の余波について、クレブスさんは、メディアを通してみたフジタ像について解説しました。

 

©Hiroyuki Sawada

 

 また本展の開催を記念して、小栗康平監督、オダギリジョー主演による映画『FOUJITA』(2015)のフランスにおけるプレミア上映がパリ日本文化会館で行われ、上映後に小栗監督が登壇しました。満席の会場に向かって監督は、「『FOUJITA』という映画の独自な時間のなかに、歴史的な人物を置きなおしてみるのが私の試みでした。藤田は1920年代のパリで華々しいデビューを飾り、1940年から太平洋戦争が終わるまで日本で過ごし、ふたつの時代、ふたつの文化、ふたつの風土を跨いで生きた人。映画は約2時間のなか、1時間ずつ、パリと戦時の日本の場面に分かれています。でも藤田の魂はそのふたつを、ひとつのものとして生きたのです。ヨーロッパで生まれた映画というものをやる日本人のひとりとして、藤田の仕事は他人事ではないという思いで映画を作りました」と語りました。
 最後は、この日の上映にかけつけたフランス人スタッフ・キャストを小栗監督が壇上へ招き、会場から大きな拍手が沸き起こりました。
 なお翌日からは6区の映画館「アルルカン」に会場を移して上映が続き、多くの観客が藤田の世界に酔いしれたとのことです。

 

©Hiroyuki Sawada

【公式企画】
「藤田嗣治:生涯の作品(1886 – 1968)」展
『FOUJITA』特別上映会