ジャポニスム2018|Japonismes 2018

木ノ下歌舞伎レポートのメイン画像
©Yusuke KINAKA

レポート
2018/12/19

伝統から現代へ―深秋のパリ、ポンピドゥ・センターに木ノ下歌舞伎見参!

 パリのど真ん中に位置し、近代美術館・図書館・国立音響研究所を擁するポンピドゥ・センターで、木ノ下裕一(監修・補綴)、杉原邦生氏(演出・美術)による木ノ下歌舞伎『勧進帳』の公演が11月1日から3日にわたり行われました。
 
 2006年より京都を中心に活動している木ノ下歌舞伎は、伝統的な歌舞伎の演目に歴史的な文脈を重ね批評や分析を行いながら、現代演劇として歌舞伎の更なる可能性を追求する演劇団体。劇団とは異なり、作品ごとに演出家を招き、歌舞伎を見たことがない人でも歌舞伎の面白さを堪能できる作品作りで全国にファンを持ちます。その主宰・木ノ下裕一とパリ公演でタッグを組むのは演出家・杉原邦生。数回にわたり共に作品を作り続けているこの二人が2016年にパリ日本文化会館で上演した『黒塚』は大喝采を受けました。
  
 2018年秋、この二人が満を持して乗り込んだのは、流行に敏感なパリジャン・パリジェンヌたちを引き寄せてやまないポンピドゥ・センター。アート溢れるこの会場で『勧進帳』はどのように受け止められたのでしょうか。

 


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 「作品自体に『ボーダーライン/境界線といった”カテゴライズ”を越えていこう/越えられないとしてもその存在を認め合うことから始めよう』という大きなテーマがある。それが伝われば楽しんでもらえると思っていました」と語るのは杉原氏。
 木ノ下氏は公演以外にもシンポジウムに参加、「パリ・ナンテール大学のクリストフ・トリオー先生から、『パフォーマンスとして面白かった』との声をいただいた。『あなたは日本の文脈で作品を作っているだろうが、フランス人だって、ほとんどの人は『勧進帳』を知らない。歌舞伎に対して近いわけではないから、同じように観ていると思う。そんなことよりも作品としての面白さやダイナミックさが一番胸を打つから、作品の持つテーマ性も変なフィルターなしにダイレクトに届いている感じがしました』と言われ、すごく励まされました」と語ります。

 

 

 さらに木ノ下氏は、フランス人のバロック演劇研究家と演劇における「型」と「伝統をどう捉えるか」について議論を行ったそうです。「フランスでは型が残らない演劇が一般的であるが、日本には伝統芸能の中に型が残っている。フランスはその型を作るべきなのか。サラ・ベルナールの型みたいなものを継承するべきなのか、違った型を生み出すべきなのか、日本人はその型に依存していいのか」といったテーマで盛り上がり、歌舞伎という演劇が持つ面白さから伝統芸能の核心に迫ることができたようです。

 


©Yusuke KINAKA

 

 フランス人の観客は「歌舞伎の公演を東京で観たことがあったが、この伝統と現代が交錯する公演は素晴らしかったです。俳優さんと演出に大きなブラボー!」「エネルギーが凄かった。すごくユーモアが散りばめられていながら、物語も面白かった。台本がしっかりしているというのが良かった。話がよくできていると思いました!」と盛大な拍手を贈り、ウェブ上では「このカンパニーは古典的なものがその強靭さで型を超え、普遍的で時間や境界を越えることができるということを提示した。それは歌舞伎が未来へダイナミックに柔軟に変化することができるという証である」と絶賛しました。

【公式企画】  現代演劇シリーズ―木ノ下裕一監修・補綴 杉原邦生演出・美術 木ノ下歌舞伎『勧進帳』