ジャポニスム2018|Japonismes 2018


レポート
2018/12/07

ジュヌビリエ劇場でタニノクロウ作・演出『地獄谷温泉 無明ノ宿』好評を博す

 パリ郊外にある国立演劇センター ジュヌビリエ劇場は、これまでも日本の現代演劇作品を多く上演し、日仏の演劇交流の担い手となっていることで知られます。そのジュヌビリエ劇場で、ジャポニスム2018の公式企画である現代演劇シリーズが始まり、庭劇団ペニノの主宰・タニノクロウ氏の『ダークマスター』と『地獄谷温泉 無明ノ宿』の公演が催されました。『地獄谷温泉 無明ノ宿』は2015年に初演され、第60回岸田國士戯曲賞を受賞したタニノ氏の代表作です。

 都会から遠く離れた山里にある、名もなき湯治宿にやってきた人形師の親子と、宿に泊まる孤独な人々の一夜を描いた現代劇。庭劇団ペニノといえば、空間や美術への徹底したこだわりで定評がありますが、今回はフランスの劇場に本物と見紛う温泉宿が再現されました。回転する舞台に立てられた玄関、二層の客室、脱衣場、湯殿が物語を展開します。リアルな設定に、フランス人観客も深く物語世界へ引き込まれていました。

 ディレクターのダニエル・ジャンヌトー氏は、これまでフランスの郊外が抱える貧困・低学歴・差別といった様々な問題に目を向けながら、国籍・地域にとらわれず才能のあるアーティストの紹介に力を注いできました。「3年前に『地獄谷温泉 無明ノ宿』をパリ日本文化会館で観て感動しました。タニノクロウさんには独特の美学と魅力を感じていたので、今回、『ダークマスター』との2本立てで上演することになり、フランスの観客にとって、日本の想像力豊かな現代劇を見せる貴重な機会になった事を嬉しく思います」と述べました。
 タニノクロウ氏は作品について、「故郷である富山を舞台に、物事が変化するという事や何かを失うという事をノスタルジーと共に表現したい」と説明しました。終演後、観客の一人に感想を聞くと「夢のような世界観を表現した演出。とても不思議な感覚だった」といいます。時に饒舌なフランスの演劇に比較して、舞台における静寂や行間に深い意味があることが評価されていました。

【公式企画】  現代演劇シリーズ―タニノクロウ演出 『ダークマスター』『地獄谷温泉 無明ノ宿』
 


© Yurina NIIHARA