ジャポニスム2018|Japonismes 2018

Event_reportes
2018/08/28

ジャポニスム2018 オープニングレポート

 古くは日本文化の原点ともいうべき縄文から伊藤若冲、琳派、そして最新のメディアアートやアニメ・マンガ、歌舞伎や現代演劇に初音ミクまで、多様性に富んだ魅力を8ヶ月にわたりフランスで紹介する日本文化・芸術の祭典「ジャポニスム2018」の会期がスタートしました。
 今回は開会式の模様と、開幕に合わせて開催されたオープニング関連企画やオープニングに先立ちすでにスタートしている公式企画の一部を簡単に紹介します。

 

ジャポニスム2018開会式

撮影:パリ日本文化会館

 7月12日に開催されたジャポニスム2018開会式では、河野太郎外務大臣とフランソワーズ・ニッセン・フランス共和国文化大臣が出席。ジャポニスム2018を紹介する映像の上映と、フランスにおいて開発されている、文化・芸術作品をタブレット上で鑑賞できるアプリ「ミクロフォリー」を使ったフランスの子どもたちによる実演が行われた後、両大臣によるスピーチが行われました。河野外務大臣は、両国には長い歴史と文化があり、互いの文化への結びつきがあること、ジャポニスム2018で日本文化の粋を堪能してもらいたいと呼びかけ、続くニッセン文化大臣は、日本における豪雨災害に対して連帯と哀悼の意を表した後、日仏両国の創造性の出会いが新たな文化を生み出してきた歴史を振り返りつつ、ジャポニスム2018がカバーする広範な日本文化の魅力を紹介、世界が直面する様々な課題を解決するために両国が果たす役割において文化が重要な柱になる旨述べました。その後、和太鼓集団DRUM TAOによる圧巻のパフォーマンスが式典に華を添え、今後パリを中心に様々な日本文化が紹介されていくことに期待を感じました。

 

 

河瀨直美監督の新作映画「Vision」特別上映

© Jean-Claude Cohen JC Press

 フランスで特に高い評価を受ける河瀨直美監督による日仏合作映画『Vision』。奈良・吉野の森を舞台に、ジュリエット・ビノシュさんと永瀬正敏さんがダブル主演を務めます。11月からのフランス公開に先立ち、7月12日、ジャポニスム2018公式オープニング事業として、シネマテーク・フランセーズでインターナショナルプレミア上映が行われました。
 河野外務大臣が来場したほか、河瀨監督、ジュリエット・ビノシュさん、映画プロデューサーのマリアン・スロットさんも駆けつけ、映画の舞台となった奈良・吉野からも、一松奈良県副知事、北岡吉野町長、金峯山寺の五條管領ほかが加わり、とても華やかな顔ぶれに。終映後は大きな拍手が巻き起こり、美しい映像を称える声が多く聞かれました。奈良の自然と文化を紹介するパネルやタペストリーが展示されたホワイエでは、金峯山寺の修験者がホラ貝を吹き、フランスのシャンパンとともに吉野のお酒が観客の皆さんに振る舞われました。

河瀨直美監督 新作『Vision』特別上映

 

 

「teamLab : Au – delà des limites(境界のない世界)」展

 ジャポニスム2018の会期に先立ちスタートした本展は、2ヶ月の段階で来場者数10万(8月現在19.5万)人を突破。連日行列ができるほどの人気を博しています。
 約2000㎡にわたる広大なデジタルアート空間では、個々の作品を独立させたまま融合し、境界のない世界を体験することが可能です。鑑賞者が触れることで次々と変化する作品や、作品中の人々が移動し続け、他の作品と混じりあうなど、インタラクティブな要素によって作品と鑑賞者の境界や、鑑賞者同士の境界も曖昧にしていきます。アート、サイエンス、テクノロジー、クリエイティビティの境界を越えて作品と鑑賞者が関わりあうことで生まれる幻想的な世界に、子どもから大人まで没頭し酔いしれていました。

「teamLab: Au – delà des limites(境界のない世界)」展

 

 

名和晃平 彫刻作品 “Throne”


Throne 2018 mixed media h.1040, w.480, d.330 cm
photo: Nobutada OMOTE | SANDWICH

 ルーブル美術館のピラミッド内に設置された黄金に輝く圧巻の彫刻作品。
 国内外で活躍の場を広げる名和晃平さんは、ジャポニスム2018のプロジェクトでルーブル美術館のピラミッド内に設置する作品を提案することになった際、すぐにこの《Throne》をイメージしたそうです。タイトルの《Throne》は“玉座”という意味。ルーブル美術館という場所が王権時代に創造された古代から近世に至るまでの世界各国の宝物を所蔵・展示していることや、美術館やピラミッド自体が権威を象徴するものであることから、加速度的に進化を遂げるコンピュータや人工知能などの存在が、やがて政治や経済に影響を与える絶大な力に置き換わるのではないか、という予感を“浮遊する空位の玉座”として表現しています。
 青空の下で燦然と輝く《Throne》もおすすめですが、夜間にライトアップされる姿もまた違う表情を見せてくれます。訪れた人々はこの作品に気づくや否や次々と写真を撮影し、ルーブル美術館の新名所になっています。

ルーブル美術館ピラミッド内 特別展示 名和晃平 彫刻作品 “Throne”

 

 

「井上有一 1916-1985 -書の解放-」展 “Throne”

(C)Grégoire Cheneau

 戦後、「書」の概念を塗り替え、前衛画家にも通ずる挑発的な作品を生み出した書家、井上有一。そのアグレッシヴで、オリジナルな表現は海外でも高い評価を受けています。
 本展では、彼の代表的な作品を中心として、紙と墨による簡素な材料、技法によって生まれる豊かで多様なモノクロームの世界を紹介。初期の代表作《無我A》、生き様と思想が表現された《貧》、ボンド(墨)や凍らせた墨など、使用する素材と描法にも工夫を凝らした一字書《花》のほか、コンテや鉛筆、木炭を使って、語りながら書いた《宮沢賢治童話 よだかの星》など、さまざまなタイプの作品を展示。展覧会に訪れたフランス人鑑賞者からも「静謐で美しい展覧会」「(井上は)書によって人生哲学を語った」と注目を集めています。

「井上有一 1916-1985 -書の解放-」展

 

 

「深みへ‐日本の美意識を求めて‐」展


ANREALAGE, collaboration with NAWA Kohei | SANDWICH, ANREALAGE 2017-2018 autumn & winter collection “ROLL”
国宝・新潟県十日町市笹山遺跡 火焔型土器 王冠型土器 十日町市蔵
火焔型・王冠型土器半復元品、土器破片 十日町市博物館蔵
(C)Graziella Antonini

 本展は、ジャポニスム2018のコンセプトを総合的に反映し、あわせて2018年に世界に向けて発信すべき「日本の美意識」を紹介する展覧会です。パリ中心に位置する19世紀に建てられた大富豪の邸宅ロスチャイルド館を会場に、天井画やシャンデリアによって装飾された各部屋で、伝統的な作品と現代の作品をあわせた100余点の作品が展示されました。
 例えば縄文土器と、それから想をえた、若手デザイナーのアンリアレイジによる彫刻ドレスは、異なる芸術的ジャンルと異なる時代の間に存在する調和を表す完璧な例であり、日本の美意識における特徴的な価値のひとつである「生命感」を表しています。他にも、奄美大島の自然を描いた田中一村と、同じく南の島に魅了されたゴーギャンの組み合わせなど、10のテーマに基づいて構成された展示は、建築家ユニットSANAAのデザインした空間とともに訪れる人々を魅了していました。

「深みへ‐日本の美意識を求めて‐」展

 

 

「池田亮司 | continuum」展

 ポンピドゥ・センターでは、フランスを拠点に活動する池田亮司の新作が2点、展示されています。1つの作品は真っ暗な展示空間、もう1つの作品は明るい展示空間で、2つは対照的で、補完しあうようなインスタレーションです。
 前者の《code-verse》で提示されるのは、池田が「メタ・コンポジション」と呼ぶ視覚、音響データ、数学的概念を用い多量で驚異的な密度のデータを圧縮した作品。シンフォニックかつポリフォニックな作品として、複数のコードを作曲することを試みています。後者の《A[continuum] 》は、5台の巨大なスピーカーを使ったオーディオビジュアル・インスタレーション。空間の中で自由に歩き回ることで微細に変化していく音の風景を感じることができます。

「池田亮司 | continuum」展

 

 

和太鼓 DRUM TAO 『DRUM HEART』

 7月13、15日はDRUM TAOの公演が行われました。会場のラ・セーヌ・ミュージカルは、建築家の坂茂が設計した、昨年オープンしたばかりの複合施設です。
 日本の新たなエンターテイメントとして進化を続けてきたDRUM TAOは、これまでも数多くの海外公演で観客たちを魅了してきました。今回のパリ公演においても、華やかな衣装を身に纏い、大小さまざまな和太鼓や三味線、琴に笛など伝統楽器の演奏とアクロバティックなパフォーマンスが次々と繰り広げられました。圧巻のパフォーマンスを目の前にして、気づけばあっという間に2時間が過ぎ、最後は会場中がスタンディングオベーション。大きな拍手に包まれていました。

和太鼓 DRUM TAO 『DRUM HEART』

 

 

【2.5次元ミュージカル】ミュージカル『刀剣乱舞』 ~阿津賀志山異聞2018 巴里~

 日本ではチケットが即日完売になるほどの熱狂で、公演の度に新たにファンを増やし続けているミュージカル『刀剣乱舞』。パリ公演でも、日本からのツアーが組まれるなど、その人気の高さが窺えます。
 7月15日、会場のパレ・デ・コングレ・ド・パリ大劇場に着くと、そこにはキャラクターに扮したファンの姿や、当日券を求める長蛇の列がありました。ヨーロッパ初上陸ということもあり、フランスだけでなく世界各地からもこの公演を楽しみにやってきた人々で開演前から会場は期待感に包まれていました。
 上演されたのは、シリーズ第一作の物語を元に2018年版とした「阿津賀志山異聞2018 巴里」。1部は重厚な歴史ドラマを描いたミュージカルで、迫真の演技、スピード感溢れる殺陣や歌によって、観客は作品の世界観に没入し、真剣に舞台を見つめていました。うって変わって2部は華やかなライブに様変わり。観客はペンライトやうちわを手に応援し、それに応えるように刀剣男士たちは舞台から客席に降りてパフォーマンスを行い、大盛況のうちに舞台は幕を閉じました。公演終了後も興奮冷めやらぬファン達が国籍を越えて交流する姿が見られました。

【2.5次元ミュージカル】ミュージカル『刀剣乱舞』 ~阿津賀志山異聞2018 巴里~

 

 

「Enfance / こども時代」展


Amabouz Taturo(旧名 西野達) 「A Doll’s House」
「Enfance / こども時代」展 パレ・ド・トーキョー(2018年6月22日~9月9日)
撮影: Aurélien Mole

 最先端の現代アートを常に発信しているパレ・ド・トーキョーで開催されているのは、日仏ならびにさまざまな国のアーティストによる、「こども時代」をテーマにした日仏共同企画の現代アート展です。到着するとまず目にするのは、Amabouz Taturo(旧名 西野達)による新作のインスタレーション《A Doll’s House》。ピンク色の巨大なドールハウスには実寸大の家具が設置され、椅子に座ることも可能な作品で、大人もこどもも楽しそうに家の中に入り、写真を撮っていました。作品の中を抜けると館内に入る仕掛けとなっており、3000㎡の展示スペースでは、20人近くの現代アートの作家や工芸職人による作品の数々がこども時代の空想、神話、そして成長の問題などを問いかけます。
 日本からも栗林隆、横山裕一、毛利悠子、宮崎啓太、森千裕、鈴木友昌といったアーティストが参加しています。

「Enfance / こども時代」展

 

 

 今回ご紹介したのは開幕直後の展覧会など一部の公式企画ですが、これからも注目の公式企画、特別企画、参加企画が目白押しです。
 パリを中心に、沢山の日本文化・芸術が披露され、フランスをはじめ世界中が日本の新たな魅力を知ることになるでしょう。
 是非、今後の公式サイトや各メディアの報道にもご注目ください。