ジャポニスム2018|Japonismes 2018

2.5次元のメイン画像

インタビュー
2019/02/06

2.5次元ミュージカルは国境を超えて
ミュージカル『刀剣乱舞』、『美少女戦士セーラームーン』パリ公演を松田誠が振り返る

 「ジャポニスム2018」では、2018年7月に『ミュージカル “刀剣乱舞” ~阿津賀志山異聞2018 巴里~』、11月に『”Pretty Guardian Sailor Moon” The Super Live』がパレ・デ・コングレ・ド・パリ大劇場で上演されました。それぞれ印象の異なる作品が現地でどう受け止められたのか、2.5次元ミュージカル協会代表理事の松田誠さんにお話を伺いました。

 
―海外の観客の反応はいかがでしたでしょうか?

 ミュージカル『刀剣乱舞』(以下『刀ミュ』)と『セーラームーン』でお客さんの反応もそれぞれに違ってユニークでした。
 『刀ミュ』は日本からのお客さんも多くて、フランス人と日本人が混在する風景が面白かったのですが、じつは公演前に出演俳優の一人が網膜剥離になって、声だけの出演になるという出来事がありました。観客のみなさんは、イレギュラーな演出をあたたかく迎えてくださったんですが、何より驚いたのが終演後。フランス人と日本人のファンのみなさんがロビーで一緒に千羽鶴を折ったり、寄せ書きを書き合ったりしていたんです。作品とキャラクター、そして演じる役者が好きだという感情で、人種も年齢も超えた文化交流が結ばれていることにとても感動しました。
 一方『セーラームーン』の観客はほとんどがフランスの方たち。さらにヨーロッパ全土やアメリカからやって来た方までいて、原作のマンガやアニメが海外でも長く愛されてきたシリーズだからこその広がり、浸透度を感じました。

 
―海外ファンの情熱に驚かれたとか

 フランスでは『刀剣乱舞-ONLINE-』のゲームをプレイすることができないのに、驚くほどの精度でキャラクターの衣裳をつくっています。同年、パリのジャパン・エキスポでもパフォーマンスをしたのですが、ミュージカルに忠実な衣裳を着て来場しているお客さんがいて、映像や写真を参考に、細部まで再現してくれている。衣裳を身につけることでキャラクターに近づくことが生き甲斐になっている若者もいたりして、その熱意に感動しましたし、本当にありがたいと思いました。

 

 
―日本のポップカルチャーへの関心の高さも、ファンの情熱を駆り立てる理由なのかもしれません。

 『刀ミュ』は刀剣が人の姿に形を変えた『刀剣男士』たちの物語ですので、まさに日本の和のカルチャーを扱っていますし、『セーラームーン』はPerfumeやきゃりーぱみゅぱみゅといった世界中で認知されてきた最近のジャパニーズポップカルチャーの起源とも言えます。だから2.5次元ミュージカルは海外の人にとってもっとも日本らしいコンテンツでもあり、幼い頃から慣れ親しんできた風景なんですよ。
 よく、2.5次元ミュージカルを海外に持っていくにあたって「どんな工夫をしていますか?」と聞かれるのですが、正直なところ、ほとんど気負いはありません。どの国のお客さんも同じところで笑って、同じところで泣く。それは、みんなが日本のアニメやマンガに触れて育ってきたからでもあり、世界共通の普遍性を持っているからなのです。
 2008年の海外初公演以来、約10年間いろんな国々で上演してきましたが、2.5次元ミュージカルがどんな文化圏でも通じるという確信は年々強まっています。

 

 
―出演したキャストのみなさんからは、どんな反応がありましたか?

 自分の演技を海外で見てもらう機会ってなかなかありませんから、みんな緊張しつつも喜んでいましたね。アニメやマンガは日本の大切なコンテンツで、それを海外で上演するということを海外公演に参加したキャストはみんな感じていると思います。今回の『セーラームーン』の公演には家族連れのお客さんもたくさんいて、小さい子は憧れのセーラー戦士と写真を撮ることを喜んでいる。原作のファンを裏切ってはいけないということや、日本を代表して海外に行くということの重責や空気感を、キャスト全員が肌で感じていたと思います。
 「ジャポニスム2018」の出陣祝賀会が日本であった際に、『セーラームーン』も参加させていただいたのですが、セーラー戦士と一緒に写真を撮りたいという方が大勢やってきて、即興で撮影会が始まってしまいました(笑)。海外のゲストの方や駐日フランス大使まで一緒にカメラに収まってくださったのですが、あの瞬間から、今回のパリ公演は始まったなと思いました。こういう熱量を持った方たちが、海の向こうで待っているわけですから。しかも海外の方からすると、日本から本物が来たってことなんですよ。だからテンションがさらに上がる。

 
―「本物のセーラームーンだ!」と(笑)。

 フランス人でセーラームーンの衣装を着ている人たちは大勢いて、僕からすると彼らこそ本物みたいにかっこよく見えちゃうけれど、フランス人にとっては日本人が本物。だからこそ、日本人キャストが海外で演じる意味があると思うんです。

 

 
―『セーラームーン』は、2019年にアメリカでの公演も控えていますが、2.5次元ミュージカルのコンテンツを海外に発信していくうえで、次なる課題はなんでしょうか。

 海外公演といっても、まだまだ数えるくらいで、特にコスト面で大きな課題があります。スタッフとキャストで総勢何十人もが海外に行き何日間もかけてセッティングをすると、公演数が1〜2回では費用対効果としては厳しいです。とはいえ、海外公演の機会は増やしていきたい。観てもらえさえすれば、絶対に好きになってもらえるのは確信していますから。だからこそコストダウンとフットワークの向上を目指していきたいです。

 
―世界の主要都市に専用劇場を持つという選択肢もありえますか?

 例えばニューヨークに専用劇場を持てたとしたら、死んでも本望(笑)。でも、まだまだいくつもの超えるべきステップがあって、今は日本人キャストが現地に出向いて、作品をお見せすることに注力しています。そうやって、次第に作品と2.5次元ミュージカルが認知されてきたら、中国人キャストによる中国語の『セーラームーン』が上演されるようになるかもしれません。

 

 
―日本では数万人規模で動員のある映画館でのライブビューイングは、海外でも展開しているそうですね。それもステップの一つでしょうか?

 そうですね。時差のある北米や南米では上映会というかたちですが、台湾、香港、オーストラリア、韓国ではリアルタイムでの上映を行なっています。地球上のさまざまな国で同時に歓声を上げ、拍手をしているファンがいることを思うと、なかなか感動的でしょう?

 
―国境を超えて、作品で結ばれているようですね。さまざまなかたちで、作品を定着させる運動を重ねていくと、いつか「2.5次元ミュージカルに出演して、ヒーローやヒロインを演じたい!」という海外の子どもたちも増えていくかもしれません。

 僕は、世界中にセーラームーンがいていいと思っているんです。「頑張れば自分もヒーローになれるかも!」って気持ちの子ががんばって修行して、いつか主役を射止めるだなんて素敵なストーリーじゃないですか。最近、ロシアのメドベージェワ選手が、国際スケート大会のエキシビジョンでセーラームーンの衣装で登場して話題になりましたが、あれも彼女なりの夢の実現だと思うんです。2.5次元ミュージカルが、夢を叶える場所になる未来をつくりたいですね。今回の「ジャポニスム2018」での『刀ミュ』や『セーラームーン』が、それらを観てくれた人たちの夢を叶えるきっかけになれば嬉しいです。

松田誠

株式会社ネルケプランニング 代表取締役会長
一般社団法人 日本2.5次元ミュージカル協会 代表理事
演劇プロデューサー

 代表作は、ミュージカル『テニスの王子様』、ミュージカル『刀剣乱舞』、ライブ・スぺクタル『NARUTO-ナルト-』、ミュージカル『美少女戦士セーラームーン』、ミュージカル『黒執事』、『ロミオ&ジュリエット』、『ロックオペラ モーツァルト』、ミュージカル『アメリ』、劇団EXILE 他。
 2018年1月にTBS系『情熱大陸』に出演。
 演劇以外にも多方面で新しいエンターテイメントを仕掛けている、日本のステージコンテンツビジネスのトップランナーの一人である。

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