ジャポニスム2018|Japonismes 2018


インタビュー
2018/07/26

「ジャポニスム2018開催に寄せて」

 「ジャポニスム2018」の幕開けを目前に控え、ローラン・ピック駐日フランス大使に、日本文化の魅力をどう捉えているか、そして日本とフランスの関係についてお話を伺いました。

――ピック大使の日本文化との出会いについてお話頂けるでしょうか。

 日本文化と出会ったのは、1980年代に一人の学生として日本を訪れた時でした。東京の街並みは驚くほど近代的でした。神社やお寺といった古い建物と、近代的な建築の見事な調和に魅了され、何度も東京を訪れました。このような日本の魅力は、フランス人なら誰もが感じるのかもしれません。今日も、京都のような観光地で多くのフランス人に出会います。

――「ジャポニスム2018:響きあう魂」で紹介される琳派や歌舞伎といった日本の伝統芸術は、フランスの美術や音楽に多くの影響を与えました。その後、明治維新を経て、今度は日本がフランスから様々な影響を受けることになりました。このような相互の影響を生み出したものとは何でしょうか。

 「ジャポニスム」という言葉自体、日本芸術がフランスの19世紀の芸術家にもたらした影響を示しています。これは印象派の絵画や、例えばファン・ゴッホの作品などに見られますが、ドビュッシーの曲のように、音楽にもこの影響が現れています。しかし私が最も重要だと考えるのは、このかつて生まれた相互に影響を及ぼし合う関係が、現在に至るまで続いているという点です。今日では、映画や漫画に世界的な関心が寄せられています。たとえば昨年東京で開催されたフランス映画祭では、是枝裕和監督と女優イザベル・ユペールの、映画における女性像(Women in Motion)をテーマとした対談が注目を集めました。日本とフランスが互いに感じる魅力は決して一時的な現象ではなく、いつの時代にも両国のアーティストたちの出会いを生み出すものです。この相互の魅力の具体的な形が重要なのです。「ジャポニスム2018」は、多様化を遂げる日本文化を今一度フランスに紹介しようという試みです。この取り組みを現代のフランス人がどのように受け入れるか、フランス当局の代表として私はとても興味を持っていますし、開催を全面的に支援しています。

――在日フランス大使館は、ソーシャルネットワークを通じて興味深い情報を色々と発信しています。発信される情報は、政治的な声明から面白いエピソード、日常的な話題まで、実に多彩です。

 政治、日常生活、文化というものは、互いに切り離すことのできない要素です。私たちはあらゆるものがつながり合う世界に生きており、この交差するつながりを大切にしていかなくてはなりません。日本人がフランスが持つ様々な魅力に興味を抱くように、フランス人もまた日本に惹かれているのです。

――在日フランス大使館は、今年4月に逝去した高畑勲氏の訃報に、どこよりも早く哀悼の意を表明しました。「ジャポニスム2018」のプログラムには、チームラボや漫画、初音ミクなどのポップカルチャーも含まれていますが、同時に2.5次元ミュージカル『刀剣乱舞』の舞台といった、より現代的なサブカルチャーのアートにも目を向けており、若い世代の関心をひくチャンスが数多くあるといえます。

 若者は、日仏関係の未来の担い手です。彼らの関心を引き続けるためには、彼らが興味を抱く分野に入っていくことが重要です。たとえば日本の漫画家とフランスのバンドデシネの作者の交流は今後広がっていくことになるでしょう。フランスというと、美食、充実したライフスタイル、そしてもちろん印象派、という固定したイメージを持たれることが未だにあります。これらももちろんフランスの一面ですが、それだけではありません。ですから、このイメージを新しくしていく努力が必要です。日本とフランスの若い世代が、若いうちにお互いの国を訪れ、そこからインスピレーションを得ることを期待しています。

――ピック大使は様々な話題に対して、意見を表明していらっしゃいます。駐日大使に任命されたきかっけは何だったのでしょうか。

 自分から日本に行きたいという希望を伝えました。日本とフランスは当初から緊密な関係を築き、その関係は、安全保障や防衛から経済、文化、技術革新に至るまで、多岐に渡って常に発展を続けています。大使の仕事は、オーケストラの指揮者のように、これら全ての要素をまとめ、調和させることです。これらの分野全てにおいて、自分の使命を果たしたいと思いました。
 日本で過ごす一日一日に、驚きと発見があります。日本という国の奥深さは、東京だけに留まっていては到底理解することができません。ですから、私は常にフランス大使館の外に出て、人々が働く場所に会いに行き、日本中の様々な地方に足を運ぶよう努めています。最近では岐阜を訪れ、和紙職人に出会いました。紙を漉く職人の無駄のない動きの美しさ、そして和紙作りと自然の間の密接なつながりに感銘を受けました。アーティストや工匠、ミュージシャンといった、文化の世界で活躍する数多くの人々に出会う機会に恵まれ、日々刺激を受けています。

――「ジャポニスム2018」を通じて、日本でもジャンルや世代を超えた文化に対する新たな思い入れが高まってほしいと思います。

 新しい世代がそれを担っていかなくてはなりません。日本でもフランスと同じように、地方自治体が地域の発展を目指して、文化に賭けることを選択した事実に驚いています。ナントの「フォル・ジュルネ」のように、日本に進出しているフェスティバルもあります。京都の門川大作市長、横浜の林文子市長、新潟の篠田昭市長は、この賭けに成功していると思います。

――最後になりますが、日本の人々にメッセージをお願いします。

 交流というのは、他人に触れることで自分自身を豊かにすることです。「ジャポニスム2018」はフランスで開催されますが、そのような交流を体験する機会は日本にも数多くあります。日本の皆さん一人ひとりに、それぞれの範囲で、日々の生活においても含め、日仏交流に関わって頂きたいと思っています。日本とフランスを結ぶ懸け橋は無限にあります。これを生かして、両国の連携の未来を築いていきましょう。

インタビュー、文、写真:高野麻衣

ローラン・ピック

 1964生まれ、パリ14区出身。フランス国立東洋言語文化学院(INALCO)、パリ政治学院を経てフランス外務省に入省。フランス外務・ヨーロッパ問題省事務次官付秘書官、駐オランダ・フランス大使、ジャン=マルク・エロー外務・国際開発大臣官房長などを歴任し、2017年6月より現職。国家功労勲章シュバリエ受章。