ジャポニスム2018|Japonismes 2018


© Jean-Claude Cohen JC Press

コラム
2019/03/22

盛況のフランスで思う私たちの宿題

映画作家
河瀬直美

 2018年、「ジャポニスム2018:響きあう魂」と題してフランスはパリを中心に約1年をかけて開催された祭典は2019年2月をもって閉幕。会期中300万人を超える人数を動員したこの祭典では日本の文化やデザインが広くフランスの方々へ知られることとなった。そのオープニング上映として世界で活躍するフランス人俳優ジュリエット・ビノシュさんを主演に迎え日本の奈良は吉野で撮影した『Vision』の上映があった。当日は、西日本豪雨災害対応のために急遽パリ行きを取りやめられることになった安倍総理の代わりに渡仏された河野外務大臣がおいでくださった。吉野の美しい自然とそこで生きる人々の死生観を描いた本作をお隣でご覧になっていた大臣からは「美しい世界ですね」と上映後にお言葉をいただいた。「これが日本です」と私は胸を張って答えていた。
 当日は世界遺産の金峯山寺より宗務総長もお越しいただき、ホラ貝の音色と共に世界の平和を祈っていただいた。

 

© Jean-Claude Cohen JC Press

 

 また、11月23日からは6週間にわたり、ポンピドゥ・センターでの河瀬直美展を開催した。ここまでの経歴を一気に鑑賞していただく機会をフランスで得たことは意義深いことであった。開催当日には書のパフォーマンスを行った。会場には現地の方々が詰め寄せ、その様子を見守っていただけた。また、クロージングには吉野より届いた酒樽を鏡開きして2019年の到来を祝うことができた。吉野からの酒は大変好評でふるまいはあっという間になくなった。会場には「美しき日本」と題して奈良県の集落で撮りためた3分程の作品をランダムに上映し続け、会場にいた人たちはその世界に見入っていた。
 こうして映像を通して物語を実感した観客の皆様は「日本に行きたい、奈良を訪ねたい」と言葉を投げかけてくれる。その繊細な文化と伝統はこの「ジャポニスム2018」を通して広く深く、人々の心に届いただろう。外国人の訪日が2020年のオリンピックに向けて益々加速するに違いない。そのとき、私たちがしっかりと「おもてなし」の心で彼らを迎え、本物の日本を持ち帰っていただくことが出来た時、この「ジャポニスム2018」の意義は達成されるだろう。私たち自身のアイデンティティをしっかりと持ち、次世代への継承を惜しみなく行動へうつし、真の文化交流を行うことに、心踊らせている。

 

© Jean-Claude Cohen JC Press

 

河瀬直美

 生まれ育った奈良を拠点に映画を創り続ける。一貫した「リアリティ」の追求はドキュメンタリー、フィクションの域を越えて、カンヌ国際映画祭をはじめ、世界各国の映画祭での受賞多数。代表作は『萌の朱雀』『殯の森』『2つ目の窓』『あん』『光』など。世界に表現活動の場を広げながらも故郷奈良にて、2010年から「なら国際映画祭」を立ち上げ、後進の育成にも力を入れる。東京 2020 オリンピック競技大会公式映画監督に就任。