ジャポニスム2018|Japonismes 2018

コラム
2018/07/03

「ジャポニスム2018」開催に寄せて
~縄文文化が日本の未来を拓く~

ジャポニスム2018総合推進会議総括主査
津川雅彦

 日本の文化芸術の魅力を国内外へ向けて発信する目的のもと、2015年に「日本の美」総合プロジェクト懇談会が設置され、日仏友好160年の節目である2018年に「ジャポニスム2018」が開催されることが決定した。
懇談会の議論のなかで、日本の文化芸術の根底にある独自の美意識・価値観について考える切っ掛けとなったのは、東日本大震災である。
 東北の被災者は壮絶な災害の中で『我慢』『忍耐』『礼節』と言う美意識を凛として失わず、世界中の人々を感激させた。
あの美学はどこで生まれ、どのように育ち、何故あの悲惨な状況の中でさえ花咲けたのか?
 その美意識は、C14炭素法によって、一万六千五百年前と認定された世界最古の縄文土器の発明とともに誕生したと言って良い。
縄文人は定住して狩猟、採集、漁労の生活を営み、周りの自然と共存し大切にしてきた。それから一万年に渡る歴史が文化的遺伝子となって我が国独特の個性となった。

 土器の発明で食料を貯蔵し煮炊きし、食文化が豊かになると、逆に食料を食べ尽くさないように配慮もするようになった。
大自然の中では生きとし生きるもの全てに命があり神があると言う思想も誕生し、動物は勿論、岩も川も木も葉も全て神の化身とされ、八百万の神の信仰となった。

 自然は全て左右非対称に作られている。縄文文化もまた世の中に同じものが二つとない事を大切にし、世の中に光が当たると影が出来るごとく、日本人は『引き算の美学』や『形』を大切にし、俳句や短歌を愛するようにもなった。
 更に白隠や仙厓の禅画にもみられるごとく余白を重んじる美学も生まれた。
その余裕が生んだ可愛さを愛する文化が発展したことで、今や日本のアニメは世界中で愛されるようになった。
 フランス人にはそういった日本の文化が最も理解されると確信している。

 19世紀のパリ万博では北斎や広重の浮世絵が、印象派の画家達に愛され、一躍ジャポニズムブームを巻き起こした。
 「ジャポニスム2018」のコンセプトである日本文化の多様性と美意識をテーマとした公式企画「深みへ-日本の美意識を求めて-」展では、縄文時代にこれ程の芸術品が作られたかと、絶句する造形美を持つ国宝の火焔型土器は是非観てもらいたい。

 また、ウイーン万博にも出展された柴田是真の伝統的技法による漆工芸も出品されるがこれも目玉の一つだ。漆は縄文時代から使われ、悠久の時を経て、耐久性と加飾手段の技術が磨かれてきた。
 自然を愛し、自然を神と敬い、自然と共存する文化遺伝子は、神仏と儒教の合体、言葉の多様化等、他国の文化と融合し日本文化を形成してきたが、自然を無視した文化はない。
 自然遺産であるべき富士山が文化遺産となったのも、この霊山を自然信仰の象徴として崇めてきた悠久の歴史と共に我が国の芸術が全て大自然を愛する心から発想されてきたことが認められたからに違いない。
 「ジャポニスム2018」の開催を通して、縄文時代から現代に受け継がれてきた日本の美意識をフランスをはじめ世界中に伝えることによって、日本の人々が自国の文化を再発見し、未来を拓くきっかけとなることを願う。

津川雅彦

1940年京都府生まれ。母方の祖父が“日本映画の父”といわれる牧野省三、父が沢村國太郎、兄が長門裕之、父方の叔父が加東大介、叔母が沢村貞子、母方の叔父がマキノ雅弘監督という文字通り芸能人一家に育つ。
子役として活動後、1956年の『狂った果実』で本格的にデビュー。以来、数々の映画やドラマに出演。
監督名マキノ雅彦として2006年、『寝ずの番』を発表。同年紫綬褒章、2014年旭日小綬賞を受章。
ジャポニスム2018総合推進会議総括主査。

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