ジャポニスム2018|Japonismes 2018

コラム
2018/04/10

ジャポニスム2018に期待する

パリ日本文化会館・日本友の会
会長 福原義春

 文化の定義は無数にあると言われるが、私自身は芸術と文化について次のように考えてきた。
 「文化とは、人間が古来より持っていた“より良く生きよう”という思いの産物であり、良い生き方を求める人間の、創造的な行為の過程と産物である」
 その国の自然や風土の上に人間生活があり、より良い生き方を追求してきた歴史が積み重なって国ごとの固有の文化が成立する。それをきちんと受け継いで、自分の世代で磨きをかけ、次の世代に手渡す。このようなサイクルを回し続けることが出来れば、豊かで競争力のある力強い国家を作り上げることと、国民一人ひとりの幸福を同時に成立させることが可能になるはずだ。
 もはや経済が人間に優先する時代は終わった。人類の発展は、文化を抜きにして語れない。世界のどんな民族・国家も、いまこそ文化の重要性をもっと認識し、文化を中心に据えて未来社会をデザインすべきだ。
 そのことを世界で最も深く理解しているのが、文化大国フランスだ。文化力は、民族や地域固有のものが別のものと衝突する際に大きくレベルアップするが、フランスは欧州の古典様式の上にイスラムの影響を受けた文様を発達させたり、さらにはルネサンスの輝きを巧みに取り入れたりしてきた。19世紀にはジャポニスムという東洋の異文化を積極的に消化し発展させ、アールヌーボー、アールデコの盛隆へと進んでいく。明治維新後の日本の芸術文化はフランスから大きい影響を受けたが、そのフランス文化の土台には浮世絵など江戸文化の影響があったという具合に、特に日仏間の文化交流は一方通行ではなく、寄せては返す波のように発信と受容を繰り返しながら、互いを新たなる高みに押し上げてきた幸福な関係と言えるだろう。
 日仏友好160年という記念すべき年に、フランスを起点として新たな日本文化のムーブメントを起こそうというのが「ジャポニスム2018」という試みである。交通や通信の発達とともに世界は急速に狭くなり、伝統と革新が共存する日本文化は世界に影響を与えている。この時代に、現代の日本は欧州文化の中心地であるフランスにどのようなインパクトを与えることができるだろうか? その波はすぐに欧州全域に広がり、さらには海を越えて押し寄せ、日本の新たな発展の起爆剤にもなる。「ジャポニスム2018」という試みは遠い異国の話ではなく、人類が近未来の世界地図を描く第一歩になるはずだ。ここで蒔かれた種が次世代に美しく大きい花を咲かせることを心より願っている。

福原義春

 1931年東京生まれ。1953年慶応義塾大学経済学部を卒業し資生堂入社。社長・会長を歴任し2001年より名誉会長。同社のグローバル展開を導くと同時に、文化芸術振興にも積極的に取り組む。現在、文字・活字文化推進機構会長、東京都写真美術館名誉館長、企業メセナ協議会名誉会長など多くの公識に従事する。『企業は文化のパトロンとなり得るか』(求龍堂)、『メセナの動きメセナの心』(求龍堂)、『美』(PHP研究所)など著書多数。

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